青森県立三本木農業恵拓高等学校(十和田市相坂)家庭クラブが制作した南部菱(ひし)刺しのタペストリーが11月7日、三沢の温泉宿「青森屋 by 星野リゾート」(三沢市古間木山)のフリースペース「囲炉裏(いろり)ラウンジ」に設置された。
八戸三社大祭や青森ねぶた祭など、青森を代表する伝統文化をテーマにした宿泊体験を提供する同施設。作品の設置は、青森に息づく文化を次の世代につなごうと共同で取り組む「未来を紡ぐ手しごとプロジェクト」の一環。この日、2年の松屋水希さん、白山るうかさん、村上栞菜さん、佐々木美緒さんが制作した、幅72センチ、高さ90センチのタペストリーを宿泊客らに披露した。
村上さんは「南部菱刺しを刺した経験はあったが、歴史や背景までは知らなかった」と話す。南部菱刺しは江戸時代の農民が麻布の衣を補強するために糸を重ねて刺したことが始まりだという。資料や過去の作品から南部菱刺しの歴史を学び、昔の人々の暮らしに思いをはせながらデザインを考案。大小さまざまな菱形を組み合わせた模様を施し、約5カ月かけて完成させた。かつて浅黄色の麻布に黒や白の糸で刺していた歴史を知り、それに着想を得て、紺色の布と「生成色」(黄みを帯びた白)の糸を使った。
作品には約15種類の技法を施し、四季を表現している部分もあるという。主に白山さんが、菱形の枠がない模様「地刺し」を担当。「間違えられない部分で、目数を数えながら刺すのに苦労した。『梅の花』の模様は春を表現している」(白山さん)という。松屋さんは最も大きな部分に「キジの足」「梅の花」「矢羽根」と呼ばれる技法を組み合わせた模様を刺した。「ただの紺色の布だったものが、一つ一つ刺していくことで菱模様が完成し、デザインを加えることでより美しいものになった」と笑顔を見せる。
同クラブ顧問の附田紀子教諭は「地域の伝統を高校生が受け継ぐ活動に取り組んできた。生徒が自ら菱刺しの型を学び、どのように制作すればよく見えるかを考えながらデザインした。生徒たちの思いに触れてもらえれば」と話す。