
八戸に春を呼ぶ「八戸えんぶり」が2月17日、開幕した。
旧八戸藩領を中心で伝承され、一説では南部氏が甲斐国から糠部(ぬかのぶ)に入部した約800年前から続くともいわれるえんぶり。八戸えんぶりは青森県南部地方、岩手県北地方のえんぶり関連行事で最大規模。今年は八戸市、南部町、階上町、おいらせ町などから34組のえんぶり組が参加する。
祭り前夜の16日19時、最も早く長者山新羅神社(八戸市長者1)の境内に陣取った妻神えんぶり組のメンバーが「おいやー」の声を上げると、約10組のえんぶり組がおはやしの披露を始め、境内は熱気に包まれた。兵庫県から訪れた男性は「八戸には何度も来ているが、祭り前夜の様子は初めて見た。えんぶり組の人たちの姿に心から感動した」と話す。
妻神組は13日から4日間、境内で寝泊まりし、17日早朝の奉納で「一番札」を授与された。親方の馬場豊樹(ひろき)さんは「昨年は組の170周年だった。171年目を新たな気持ちで迎えようと考えた。(祝福芸を担当する)子どもたちには元気よく過ごしてほしい」と話す。
10時40分、中心街で祭り期間中の最大行事「一斉摺(ず)り」が始まると、南部弁で歌われる「めでたづくし」の口上、豊作を願い大地を打つジャンギの音やおはやし、祝福芸を担当する子どもたちの愛らしい歌声、詰めかけた市民や観光客の歓声があふれた。
祭りに合わせて「御国入り」した八戸藩南部家16代当主の南部光隆さんは同神社の拝殿から各組の奉納を見守り、八戸市庁(内丸1)前市民広場で行われた「御前えんぶり」を鑑賞。「無事に開催され何よりうれしい。農業の祭りではあるが、作物が育つようにという藩主の祈りも入っている。八戸の皆さんが幸せな年になれば」と目を細める。
メインエリアの八戸市中心街は祭り最終日の20日まで、春を呼ぶおはやしに包まれる。