
八戸の伝統行事「加賀美流騎馬打毬(だきゅう)」の現状を紹介するトークイベントが4月5日、夢ハウス(八戸市大工町2)で開かれた。
喫茶店「るぽぞん」(同)の常連客が、担い手や馬の不足などを背景に存続の危機にある騎馬打毬の継承のヒントを探ろうと企画。八戸藩南部家16代当主の南部光隆さんと八戸騎馬打毬会幹事長の山内卓さんが、約25人の市民を前に騎馬打毬の歴史や現状を紹介した。
青森県の無形民俗文化財に指定される加賀美流騎馬打毬は、八戸の夏を彩る「八戸三社大祭」の中日の8月2日、長者山新羅神社(長者1)の「桜の馬場」で開かれる。人馬一体となって毬(まり)を拾い上げ、勢いよく毬門(ゴール)に投げ入れる場面が見ものとなっており、大勢の市民や観光客が詰めかける。
南部さんはイベントで、1827年、8代藩主南部信真が現在の社殿や桜の馬場が整備されたことに合わせ馬術の振興を目的に騎馬打毬を導入したことや、2027年に200周年を迎えることを紹介。「八戸に住む皆さんの中にも、騎馬打毬をあまり知らないという人が多い。騎馬打毬のことを知ってもらい、途絶えてしまいそうな現状を知れば、このままではいけないと思う人も増えるのでは」と呼びかけた。
山内家では長年に渡り騎馬打毬の継承に取り組んできた。山内さんによると、1942(昭和17)年~46(同21)年に八戸市長を務めた経験を持つ故・山内亮さんが八戸藩の筆頭家老の血筋であることを背景に同会の会長になったことがきっかけという。騎馬打毬はコロナ禍を経て4年ぶりに実施された2023年以降、8人だった騎士を6人に減らして実施。人材、運営費用、馬具の確保に加え、馬の高齢化も背景にある。山内さんは「騎馬打毬に関する資料は大英博物館にも収蔵されているし、英国内のポロクラブで騎馬打毬を演武したこともある。海外からは注目されているが、地元に対してのアピールが足りない」と訴えた。
来場者からは「8月は暑く、観戦する環境にも課題がある」「『お庭えんぶり』のように解説を付けたり、せんべい汁を提供したりしたらよいのでは」「地元の人が知るだけでは経済に反映されない。プロジェクションマッピングで上映したり、ポスターにしたりして、騎馬打毬の格好良さを早い段階でプロモーションしたら良いのでは」などの意見が聞かれた。
南部さんは6月14日、騎馬打毬に取り組む人を応援するためのトークイベントを、八戸ポータルミュージアムはっち(三日町)で開く。