「鳥瞰(ちょうかん)図絵師 吉田初三郎パネル展」が現在、八戸市美術館(八戸市番町)で開かれている。主催は八戸市。
吉田初三郎研究家で種差観光協会会長の柳沢卓美さんの協力で開いている同展。今回で3回目。大正から昭和にかけて活動した吉田が種差海岸に構えたアトリエ「潮観(ちょうかん)荘」で制作した鳥瞰図を紹介する。高松宮殿下、第30代内閣総理大臣で岩手県出身の斉藤実など、当時の名士が訪れたこともあるという潮観荘の大型ジオラマ、吉田が手がけた八戸の風景画、鳥瞰図を立体化させた映像なども展示する。
柳沢さんは「鳥瞰図は鳥の目で見た航空写真のような図。今でいう観光パンフレットで、町や企業を紹介した」と話す。吉田は生涯で約2000点の鳥瞰図を手がけ、自身の言葉を添えて各地の産業や文化、観光名所を紹介した。会場では、八戸市のほか七戸町、札幌市、小樽市(北海道)、稚内市(同)、釜石市(岩手県)、福井県、四国などの鳥瞰図16点を展示。大きくねじ曲げた画面構成が特徴で、遠く離れた土地の風景も小さく描かれている。13点には豆粒ほどの富士山の姿もあり、「描かれた町との位置関係が分かる」(柳沢さん)という。
八戸市の鳥瞰図は1933(昭和8)年、1937(同12)年、1950(同25)年、1954(同29)年の4作品を並べた。「細かいところを見てもらえれば、八戸の変化を見つけることができる」と柳沢さん。会場には虫眼鏡を用意。戦前は沼地だった八太郎地区が工業地帯になるまでの変遷や、海に浮かぶ蕪島と陸地をつなぐ細い橋が、戦後は大きな道になっている様子などを見比べてもらう。鳥瞰図に付属された八戸の産業や文化を紹介するページには、草木が生い茂る前の三八城神社(内丸1)を捉えた写真もプリントされている。
ミュージアムショップでは復刻版の鳥瞰図や画集を販売する。
柳沢さんは「初三郎は『種差は日本一の海岸』という思いでアトリエを建て、迎賓館としても使った。活動が種差海岸の名勝指定にもつながり、現在まで景観が守られてきた。今年新たに展示した作品もあるので、見に来てもらえれば」と話す。
開場時間は10時~19時(最終日は16時まで)。入場無料。11月21日まで。