北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録に期待が高まる中、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館(八戸市是川)で7月10日から、開館10周年を記念した特別展「是川遺跡」が開催されている。
是川遺跡は昨年、1920(大正9)年の泉山斐次郎・岩次郎兄弟による発掘開始から100周年を迎えた。是川縄文館では、泉山家から寄贈された出土品や、1997(平成9)年に風張1遺跡から出土した国宝「合掌土偶」などを展示。是川遺跡や風張遺跡の出土品を展示するほか、埋蔵文化財の調査・研究を行っている。
同館は2011(平成23)年7月10日に開館。開館10周年を記念した特別展「是川遺跡」は、過去10年間の調査研究成果をもとに、縄文時代の人々の暮らしぶりがわかる内容。豊かな山林や、太平洋へとつながる新井田川、沢などの環境に恵まれた是川地区では、縄文時代草創期にはヒトが活動していたとみられる。
このうち、晩期の中居遺跡の生態系については、山、原、川、海などの資源を得て、人為的な生態系を作り出して暮らし、 すぐそばを流れる新田川からはサケやマスをとっていたと指摘。道具を捨てる送り場では、完全な形の5本の木製品が縄で束ねられていたり、土器が地面に置かれる形で捨てられていたりするなど、土や木、石などから作った道具を豊穣を祈って自然に還す自然崇拝の社会だったことがうかがえる。
縄文時代前期から中期に始まった漆の利用などにも触れ、赤茶色の漆が塗られた土器も展示。中居ムラでは、現代と通じる漆利用の技と知識を持っていたという。
展示ではギリシア、イラン、パキスタン、中国などの海外の遺物や、青森県旧総合運動公園陸上競技場の聖火筒のモデルとなった中居遺跡の出土品のレプリカも展示している。聖化筒は1966(昭和41)年の高校総体や1977(昭和52)年の第32回国民体育大会でも使用された。
八戸市では令和元年から6年間の計画で中居遺跡のムラの様子を復元する整備を進めており、間もなく世界遺産となる是川遺跡の価値や魅力を伝える事業を展開する予定。 同展では「みなさんもムラの一員となって、是川縄文の郷を育てていきませんか」とまとめている。
同館学芸員の落合美怜さんは「これまで、是川遺跡の調査・研究を進めてきた。是川遺跡で営まれたムラの移り変わりや人々の暮らしぶりを中心にたくさんの資料を展示している。海外の資料も展示しているので、夏休みにぜひ来てほしい」と呼び掛ける。
開館時間は9時~17時。期間中の休館日は7月12日、8月23日。観覧料は、一般=300円、高校生・大学生=150円、市外小中学生=50円、未就学児無料。特別展は9月5日まで。