三戸町地域おこし協力隊の米澤雅貴さんが現在、同町で生産が途絶えたビール用ホップの試験栽培に取り組んでいる。
同町のビール用ホップの生産は2018(平成30)年、後継者不足の影響で途絶えていた。米澤さんは弘前市出身。東京都内で中小企業診断士として個人事業を行っていたが、地元・青森へのUターンを考え参加した東京都内での移住イベントで同町の状況を知り、地域おこし協力隊に応募。2021年11月に着任した。
着任から約半年はホップの試験栽培に向けた準備を進め、2022年5月、香料メーカー「小川香料」(東京都中央区)などの協力を得て、借り受けた畑に初めてホップの苗を植えた。同年8月~9月に収穫を迎え、同町産ホップの「復活」に向けた布石を打った。
米澤さんは同町でのブルワリー工場開設に向けても奮闘する。今年2月、初めて収穫したホップ6種類のうち「カスケード」を秋田県羽後町でビールを醸造する「羽後麦酒(ばくしゅ)」に持ち込み、試作品を製造。完成したクラフトビールには「ホップ栽培を再び三戸で興したい」と思いを込め「輿(おこし)」と名付けた。「輿」は、苦みが少なく果物を思わせる香りが特徴の「ウイートエール」。同24日、松尾和彦町長・町議会議員らに披露し、「飲みやすい」などの評価を得たという。
着任からの約1年6カ月。米澤さんは「生きている植物と向き合うので、天気の度合いに左右される。人の手ではどうにもできないこともあるが、難しくも楽しく感じている」と振り返る。中小企業診断士からホップ農家への転身は手探りの連続だったが、「プロジェクトを進めていくという点では、中小企業診断士と共通している」と話す。「自分が栽培したものでプロダクト(製品)を生み出すことにやりがいを感じる」とも。
隊員の任期は2024年10月まで。任期満了後は農家として独立することを見据える。現在はホップの栽培と並行して酒類販売免許の取得に向けた準備を進め、ブルワリー工場の候補地を探す日々を送る。ジンの製造も視野に入れ、香料となるジュニパーベリーの試験栽培にも取り組む。米澤さんは「小さくても良いので、気軽に立ち寄って話ができるカフェのような『コミュニティーブルワリー』にしたい」と力を込める。
5月、2期目を迎えた畑では多年草のホップが再び芽吹き、つるを伸ばし始めた。「ホップの株は3年目で十分な収量が得られるようになる」という。米澤さんは「2年目の今年は、昨年の2倍ほど収穫できるといいと思い世話をしている」と話す。ブルワリー工場の開設に向けては「良い物件があれば紹介してほしい」とも。