広島市で被爆したピアノを市民が演奏する「被爆ピアノ平和コンサート 未来へつなぐ平和の願い」が10月30日、八戸ポータルミュージアムはっち(八戸市三日町)で開かれた。
八戸学院大学(美保野)短期大学部幼児保育学科が主催。1945(昭和20)年の広島・長崎への原子爆弾投下によって被爆した「被爆ピアノ」を活用し、平和の尊さを考えてもらおうと昨年に続き開催した。被爆ピアノは、調律師で自らも被爆2世である矢川光則さんが管理。矢川さん自身がトラックのハンドルを握り、2001(平成13)年から全国約2000カ所を巡り、被爆ピアノを使った演奏会を開いている。
今回使用したのは「カズコのピアノ」と呼ばれるドイツ・ホルゲル社製造のアップライトピアノ。カズコさんは17歳の時、広島市でピアノと一緒に被爆。2007(平成19)年、矢川さんにピアノの修理、管理を託していた。今年8月23日に96歳の誕生日を迎え、その4日後に亡くなったという。
この日のコンサートには、小学生から50代まで幅広い年代の市民が出演。連弾も含め22曲が演奏された。詰めかけた観客は製造から100年たっているというピアノの響きに聴き入り、演奏を終えた演奏者には熱い拍手が送られた。
ドビュッシーの「アラベスク第1番」を披露した八戸学院大学短期大学部幼児保育学科1年の二坂桜来(さら)さんは「とても古いピアノなのに弾きやすく音もきれいで感動した。アラベスク1番は美しい曲なので、みんなの心が優しくなって世界が平和になればいい」、今回唯一の自作曲「地球を守れ!スーパーヒーロー」を演奏した吹上小学校2年和泉奏さんは「スーパーヒーローがやって来て、街を壊す怪獣や戦争を倒す景色を頭の上で思い浮かべながら弾いた。ニュースで流れる戦争が、もう一生なければいい」と話した。
矢川さんは「カズコさんのピアノは平和のピアノとして大きな役目を果たしている。八戸の人にはこのピアノを通し、改めて平和の尊さを考えてもらえればうれしい。この後も全国を回り、2年後の戦後80年までは被爆ピアノによる演奏会を続けたい」と話す。