
八戸で武術太極拳に取り組む小田桐咲(えみ)さんが現在、来年青森県で開かれる「第80回国民スポーツ大会(青の煌(きら)めきあおもり国スポ)」での優勝を目指し、中国に遠征する準備を進めている。
「海猫ふれんず」では動画やトークイベントの開催を通して八戸を発信する活動に取り組む
28歳の小田桐さん。武術太極拳のうち、剣を持って素早く動いたりポーズを取ったりする「双剣(そうけん)」を得意とし、これまでに、全日本武術選手権大会「女子伝統器械の部」で3回優勝した経験を持つ。情報発信ユニット「海猫ふれんず」のメンバーや情報サイト「はちまち」のライターという顔も持ち、八戸の情報を発信する活動にも取り組む。
小田桐さんが武術太極拳に出合ったのは中国・北京市に住んでいた5歳の頃。7歳で八戸に戻った後も高校卒業まで続けた。東京都内の大学を卒業した後は大手アパレルメーカーに勤めたが、2020年、「あおもり国スポで優勝することを目指し、八戸の人を笑顔にしたい」と退職し、八戸にUターン。現在は青森八戸武術クラブの代表兼コーチとして後進の育成に力を入れる傍ら、選手としても活動。来年のあおもり国スポ武術太極拳競技会「成年女子自選長拳の部」で優勝することを目指し、今年5月下旬から約1カ月、中国・四川省の道場「竜匯(ロンフイー)国際武術アカデミー」で本場の武術太極拳を学ぶ。
中国遠征を決めたのは、昨年の佐賀国スポ武術太極拳競技会成年女子自選長拳の部がきっかけだったという。2022年の栃木国体では3位、翌年の鹿児島国体では2位と順位を上げたが、優勝を目指して臨んだ佐賀国スポでは5位と、順位を落とした。「今の自分の感覚やインプットの仕方では、勝てないと思った。自分より10歳ほど若い選手が上位入賞する様子を見て『自分の天井(限界)』を感じ、中国への遠征を決意した」と小田桐さん。
現在は中国遠征に向け練習に取り組むほか、クラウドファンディングで遠征費用への支援を募る。3月7日現在、120万円の目標に対し約123万円の支援が集まる。遠征先の道場では武術のスキルを根幹から変えることを目標に、寮生活を送りながら演技力の向上に取り組むという。
小田桐さんは「『海猫ふれんず』の活動を通し、八戸の人や景色の優しさに育てられてきたことを実感した。勝つことだけを目標にするなら東京にいた方が良いが、青森の皆さんに武術太極拳を知ってもらいたいという思いがある。武術に興味のない人も青森の選手を応援するような景色が広がるようになれば」と話す。「(いろいろな分野で)八戸で道を切り開いている人がたくさんいる。『八戸ではやりたいことができない』と感じている若い人の背中を押せたら」とも。