東日本大震災で大きな被害を受けた八戸港八太郎地区北防波堤で、「粘り強い構造」による防波堤の復旧が進んでいる。
直接見ることができない、水中での施工を想定し、運転席を目隠しして、施工実験・訓練を行う
同防波堤は太平洋に面し、港湾に侵入する波浪を低減し港湾内の水域を静穏に維持することを目的に1965(昭和40)年から1998年にかけて整備された。東日本大震災では同防波堤の総延長3500メートルのうち9割にあたる3241メートルが被災。防波堤の本体にあたるケーソン(コンクリート製の箱状の躯体)も1428メートルにわたり損壊や滑落の被害を受けた。
同震災の被害を受け、国土交通省では八戸港特有の損壊のメカニズムを分析し水理実験を繰り返した。分析により同防波堤付近は津波の直接的な波力で防波堤が移動・滑落するとともに、水深が9メートルと比較的浅いことから、防波堤を越流した津波が陸側の基礎部分を削り取ることにより基礎部分を流出させることもわかった。
それらを踏まえ震災の復旧には、同規模の津波でも容易に倒壊しない「粘り強い構造」の防波堤を導入した。同構造の特徴は、防波堤上部の形状を変更し越流した津波の流れを変えること、越流した津波が基礎に直接当たらないようにブロックを設置するほか、ケーソンと基礎の間に摩擦力増大マットを設置することなどが特徴だ。
国土交通省東北地方整備局港湾空港部港湾事業企画課課長補佐の青木伸之さんは「『粘り強い構造』を導入することで、少しの工夫で津波に対して容易に倒壊しないような構造になった。材料費や施工費も従来とほとんど変わらない」と話す。同構造の導入について、「八戸、釜石、大船渡、相馬で『粘り強い構造』を導入する。まずは八戸港から」と話す。
「粘り強い構造」については、「従来は津波が勢いよく来た場合、防波堤の本体がバタバタバタと倒れるのに対し、『粘り強い構造』ではズルズルズルと動くイメージ」とも。
同防波堤ハネ部では2月14日現在、ケーソン35函(かん)のうち25函が設置済み。ケーソン据え付け完了まで残り10函となっている。