
ヴァンラーレ八戸が2026シーズン、J2の舞台に立つ。創設20周年の節目でつかんだ昇格の裏側には、勝敗やカテゴリーだけでは語れない「地域と共に歩むクラブ」という一貫した理念があった。八戸市と南郷村の合併を背景に誕生した同クラブは、子どもたちの環境づくりと地域コミュニティーの維持を原点に歩みを重ねてきた。節目の年を迎えた今、クラブが見据える未来とは何か。下平賢吾社長と、サポーターの象徴的存在として活動を支え続けたティガーマスクさんに話を聞いた。
――ヴァンラーレ八戸が創設20周年を迎えました。振り返ってみてどう感じていますか?
下平:これ、何分の番組ですか?
――10分です。
下平:10分じゃ語れないですね(笑)
――それくらい、いろいろなことがあったんですね。ティガーさん、2025シーズン、J2昇格を決めましたが、率直にどんな思いですか?
ティガー:J2昇格は素晴らしい結果だと思います。パートナー、ファン、サポーターの皆さんがいたからこそ、昇格できました。本当にありがたいことです。
――2006(平成18)年に創設され、2014(平成26)年にJFL、2019年にJ3と駒を進めてきました。2026シーズンはJ2ですね。
下平:J2だからという特別な思いはなく、今まで積み上げてきたことをどれだけぶれずに実直にできるかだと思います。どれだけJ2で通用するか、挑戦ですね。
ティガー:社長が話すように、J2昇格は日々の積み重ねの結果で、ご褒美みたいなものだと思います。私の「ティガーマスク」の活動は「南郷」が100年残ってほしい思いでスタートしました。もちろん、カテゴリが上がることは素晴らしいことですが、地域に愛されていくために活動を続けてほしいという思いがあります。
――南郷が100年残ってほしいという思いもあるのですね?
ティガー:はい。(2005(平成17)年に南郷村が)八戸市に吸収され、「南郷」の地名が残らないのではとの声もあり、活動をスタートさせたんです。

――昨年2025年は、八戸市と南郷村が合併して20周年でした。その節目にヴァンラーレがJ2昇格を決めたのは感慨深いものがありました。下平さん、ではなぜヴァンラーレを作ったのですか?
下平:子どもたちの環境を良くしたいという思いが先にありました。Jリーグに行きたいとは思っていなかったんです。八戸市と南郷村が合併になることで、ソフトボールや野球の大会、村民体育祭など、旧南郷村の社会体育事業を行政で行わないことになりました。地域のコミュニティーの維持を、南郷の人がやっていかなければならないだろうと思いました。ヴァンラーレ八戸を作ろうと思ったのは、そこからなんです。
――ティガーさんは南郷地区の「猫」としてヴァンラーレを見守ってきたと思います。どう感じていますか?
ティガー:サッカーで村おこしを継続して行っていることがすごいと思っていました。何か自分の役に立てることがあればと思い応援し始めたのが、活動のきっかけです。
――ティガーさんの活動はJFLになる直前の2013(平成25)年ごろからでしたね。ティガーさんが作った「サポーターズグループ」の活動は、2026年に10周年を迎えるそうです。今年、チームもサポーターも、大きな節目を迎えます。
ティガー:自分で作っていて知りませんでした(笑)。初めは1、2人のサポーターが「ばやばや」と活動していたので、現在の試合会場の盛り上がりは本当にすごいなと思いますね。

――チームが大きく育ってきて、必要になるのがスタジアムです。J2で戦い続けるには最低5000人分のスタンド席があるスタジアムが必要で、このほかにも細かな条件があります。ヴァンラーレは今、青森県サッカー協会、八戸市サッカー協会と共に新スタジアムの整備に向けた署名活動に取り組んでいます。この狙いを教えてください。
下平:私たちがJ2に昇格させてもらったので、期限内にスタジアムを整備していかなければなりません。地域の役に立つスタジアムが必要だと思っています。ヴァンラーレ専用のスタジアムではなく、皆さんが使えるスタジアムにしていかなければならない。地域を変えられるチャンスを私たちが先導しているだけで、ここからは地域の皆さんに経済効果やまちおこしなど「J2になったら地域が変わります」「J1になったらもっと変わります」と言うことを、私たちが汗をかいてちゃんとした説明をして、スタジアムではなく「みんなの施設」にしなければならないと考えています。地域を変えるチャンスが来たと思っています。
――スタジアムは多目的利用、多機能利用、防災などがキーになっています。サッカーに限らず、地域全体が一緒に盛り上がっていく機運につながっていくと考えられますね。
下平:そこが大事だと思います。私たちがホーム戦などで使えるのはいくら頑張っても30日です。そのほかの日数をどう使うかを提案する努力を惜しまずにやりたいと思います。ぜひ、署名に皆さんの思いをいただければと思います。
――語弊がある言い方かもしれませんが、ヴァンラーレはサッカーをやるためだけのサッカーチームではないということでしょうか?
下平:そうですね。私たちはサッカーもやってきましたが「地域に必要とされ、役に立って、愛される」という理念をそのまま遂行してきました。そういった施設になるためには、皆さんの力、理解が必要だと思います。我々だけが使うものではなく、皆さんが使える施設にしなければと考えています。
――J2にはベガルタ仙台も所属しています。すごい数のサポーターの皆さんがヴァンラーレのホーム戦に来て、試合後に八戸で過ごしてくれれば、経済効果も大きいかもしれませんね。
下平:近いうちに経済効果もお示ししたいと思います。J3では、アウェーから来るサポーターは平均100人に満たないと思います。それがJ2になれば、仙台、札幌、山形から500人~1000人単位のサポーターが来ます。その経済効果は大きなものになると思います。繰り返しになりますが、地域を変えられるチャンスだと思います。
――ちょっとした音楽フェスが毎月行われるくらいのインパクトがありそうですね。
下平:2週間に1回、4000人~5000人、それ以上の人数のイベントが開かれる。これはJリーグでしかできないものだと思います。そういったものも活用しながら、地域を盛り上げると言うことだと思います。

――ティガーさん、昨年11月23日のホーム最終戦は4000人以上の来場があり、本当にお祭りのようでしたね。私も久しぶりの観戦でしたが、本当に楽しかったです。
ティガー:本当に多くの皆さんでにぎわいました。そこで勝てれば最高でしたが(笑)。沖縄戦が行われた11月29日のマチニワでのパブリックビューイングで皆さんに喜んでもらえたので浮かばれましたね。
――それくらい、サッカーは人の心をつかむし、チームが成長すれば経済効果も生まれて、地域が元気になっていくのかもしれません。でも、一定期間以内にスタジアムを作る必要があるんですね?
下平:3年以内に整備計画をJリーグに提出し、5年以内に着工する必要があります。最長8年です。8年といってもそんなに時間はないと思っていますので、スピード感をもって取り組んでいきます。
――市民やサポーターの皆さんにメッセージがあれば、お願いします。
下平:J2に昇格して皆さんに関心を持っていただいていることを感じています。スタジアムに来てもらい、選手の背中を強く押していただければ。その盛り上がりが、いいものを与えられると思っています。
ティガー:2026年シーズンもヴァンラーレ八戸の応援をよろしくお願いします。
ありがとうございました。