「第49回はちのへ菊まつり」で展示する菊人形が、長者まつりんぐ広場(八戸市糠塚)で制作されている。
今年の菊人形の題材は歌舞伎十八番の代表的な演目「暫(しばらく)」。罪のない人々が皆殺しにされそうになった時に、主役の鎌倉権五郎景政が現れ悪人を退治する物語。鎌倉権五郎景政が両腕の大きな袖を広げ堂々と見得を切る場面を菊人形で再現する。
江戸時代に市川團十郎の「にらみ」が疫病を払ったという逸話があることから、新型コロナウイルスの早期収束を願ってこの題材が選ばれた。
制作は鍛冶町菊友会が手掛ける。制作は10月1日からスタートし、1カ月ほどで仕上げる。今年は人形の顔を新たに制作。カニの足のように頭から左右に広がる髪や、白い肌に施された赤い化粧、力強い目元や口元などを再現する。菊人形の本体は、細く切った竹を組み合わせた胴体に、湿らせた園芸用水苔を金属製の網で包んだ衣を着せ、菊の花を差し込んでいく。
使用する菊の花は約850本。花は祭りの約10日前につぼみの状態で届き、約5日間水を吸わせて開花させ、10センチメートルほどの長さに短く切り、約5日間かけて衣に差し込んでいく。祭り期間は4日間、最終日まできれいな状態で鑑賞できるよう、「工程のタイミングを見計らうのにコツがいる」と制作メンバー。
例年会場内で行っていた菊人形の製作体験は、新型コロナウイルスの感染防止のため行わない。
以前は市内の幾つかの団体が人形を制作していたが、現在は八戸三社大祭の山車組関係者有志による鍛冶町菊友会のみが手掛けている。菊人形は八戸三社大祭の人形とは構造が大きく異なるため、「後継者への指導が課題」と制作メンバーは話す。
鍛冶町菊友会の下崎雅之さんは「今年は新型コロナウイルスの影響で菊祭りが開催されるか心配だったが、何とか開催することになった。歌舞伎のにらみは縁起物で、病魔退散の意味もあると聞いている。新型コロナウイルス退散という願いを込めたので、人形のにらみにも注目してほしい」と話す。
八戸菊まつりは八戸ポータルミュージアム「はっち」(三日町)、八戸まちなか広場「マチニワ」(同)で開催。開催期間は11月6日~11月9日。開催時間は9時30分~17時(6日は10時開始、9日は16時終了)。入場無料。