新郷村の初夏を彩る恒例行事「キリスト祭」が6月4日、キリストの里公園(新郷村戸来)で4年ぶりに開かれた。
祭りは今回で59回目。同村で語り継がれる伝説「キリスト渡来伝説」に基づいて発見されたというキリストと弟イスキリの墓とされる十字架の前で、キリストを慰霊しようと実施。同村では1935(昭和10)年から伝わる伝説が「何もなかった山村に突如として湧いて出た」ことから「キリスト湧説(ようせつ)」と呼び、現在に至る。
同日は4年ぶりの祭りを待ちわびたファンが県内外から詰めかけ、祝詞奏上、玉串奉てん、田中獅子舞保存会による奉納舞など、十字架を前に行われる慰霊祭を神妙な面持ちで見守った。盆踊り「ナニャドヤラ」の奉納舞では、浴衣に身を包んだ「新郷村ナニャドヤラ芸能保存会」のメンバーが十字架を囲み、和太鼓のリズムと歌に合わせて舞を披露。同村で「106歳まで暮らした」と伝わるキリストに思いをはせた。
慰霊祭の後は、キリスト湧説・ナニャドヤラに関する資料を展示する「キリストの里伝承館」を前に「ナニャドヤラ体験会」を実施。同園には地元で親しまれる「なにゃどやら、なにゃどなされの、なにゃどやら」の歌声が繰り返し響いた。訪れた人々は踊りの輪に加わり、見よう見まねで踊るなどし、「神秘とロマンの里」として知られる同村の「奇祭」を楽しんだ。
ナニャドヤラを踊るために東京都から初めて訪れたという「東京盆踊り天国 踊る・めぐる・楽しむ」著者の佐藤智彦さんは「ナニャドヤラは子どものころから踊りたいと思っていた」と話し、浴衣姿に身を包み気合十分の様子。「全国の盆踊りを巡っている」といい、「地元・新郷の人とナニャドヤラを踊ることができて楽しかった」と目を細めた。
同村では1935(昭和10)年から「ゴルゴダの丘で処刑されず海を渡り、八戸港から日本に入った」「十来太郎大天空と名乗り新郷に住んでいた」などのキリストに関する昔話が語り継がれ、2004(平成16)年にはイスラエルの関係者が同村を訪れるなど、「キリスト湧説」を通した地域振興に取り組んできた。
大祭長を務めた同村の桜井雅洋村長はあいさつで、「観光需要の活気が戻りつつある中、村の魅力を再確認し盛り上げていきたい」と思いを新たにした。