イトーヨーカドー八戸沼館店(八戸市沼館4)が8月31日で閉店する。
ピアドゥの一角にはイトーヨーカドー八戸沼館店の閉店を惜しむ声を書き込んだバルーンが登場した
イトーヨーカドーは1980(昭和55)年4月19日、八戸で初めての出店となる八戸店(十三日町)がオープン。2003(平成15)年2月23日の閉店まで、八戸市中心街のシンボルの一つとして市民に親しまれた。八戸沼館店は1998(平成10)年3月12日、ショッピングセンターピアドゥ(沼館4)のメインテナントとしてオープン。同店の閉店で、イトーヨーカドーは八戸での44年の歩みに幕を閉じる。
同店では現在、八戸でのイトーヨーカドーの歩みを振り返るコーナーを展開。従業員の制服をデザインした撮影スポット、東日本大震災の発災当時に店長だった深井洋一さんからのメッセージ、八戸店や同店の外観の写真、従業員が参加した八戸三社大祭の山車組「淀山車組」の衣装や祭りの思い出の写真、同店から来店客に向けたメッセージを伝える「感謝状」などを展示する。
来店客がメッセージを書き込める掲示板には「高校、大学、社会人、定年になるまで、人生と共にヨーカドーがあった」「鍬田店長の大ファン」「閉店してもわがイトーヨーカドーは永遠に不滅」「小学生の頃、祖母におもちゃを買ってもらい、学生の頃はポッポでポテトを食べて友達と話し、結婚して妻と買い物に来た。いつもヨーカドーが思い出にあった」「イトヨFOREVER」などの声が寄せられている。
8月21日、家族がピアドゥの建設工事に携わったという女性が鍬田明美店長に声をかけ、ピアドゥの開業を記念したテープカットで使われたというはさみを見せ、閉店を惜しむ姿があった。
鍬田店長は地域の特性を生かした店舗運営を心がけた。2017(平成29)年9月6日の着任以降、同店を代表して淀山車のメンバーとして八戸三社大祭に参加したり、来店客や従業員の人気商品、青森県の名物や名所をかたどったオリジナルのカプセルトイを販売したりした。
コロナ禍の影響で八戸三社大祭が4年ぶりに通常開催された2023年は、「どこよりも暑い夏にしたい」と祭りに参加する山車組に「ラブコール」を送り、写真の提供を受け、山車をかたどったカプセルトイを販売。「着任後に八戸で飲んで感動した」という地酒「陸奥八仙」のボトルやロゴをかたどったカプセルトイは、三沢市を中心に活動するクラフト作家BeBe(ベベ)さんの協力を得て、アクセサリーとして使えるようにした。
プライベートでは「雪が降ると近所の人が協力して雪かきをし、地域が連帯する姿に感動した」という。
「カプセルトイに関する報道をきっかけに、従業員ではない市民の皆さんにも『店長さん』と呼ばれたことは初めての経験だった。八戸三社大祭は子どもたちも山車組の責任を担い、その姿を見て大人たちも頑張っていた。八戸は人に優しくなれる街。助け合いの精神がある」と鍬田店長。カプセルトイの製造を手がけたアサヒ印刷(弘前市)の漆澤知昭社長は「鍬田店長は人と人との結びつきを深めてくれた」と振り返る。
鍬田店長は「閉店に向け、イトーヨーカドーがお客さまに求められていることは何なのかを考えている。忙しくても商品はきれいに並べ、食品は丁寧に加工したい。それが、愛してもらったお客さまに対してできること。涙を見せる時もあるかもしれないが、凛(りん)とした姿勢と笑顔で、最後の日までお客さまを迎えたい」と力を込める。
営業時間は10時~20時。