八戸市の種差海岸周辺(八戸市鮫町)で12月21日~26日、昨年の台風で被害を受けた黒松を馬で搬出する「馬搬」が行われた。
種差海岸周辺の黒松は昨年8月の台風10号で大きな被害を受け、植栽の復旧のため八戸市森林組合(八戸市卸センター2)が倒木の処理、裂けた木の伐採、手入れの行き届いてない林のメンテナンスを行っている。馬で木を運搬する馬搬は大沼流山牧場(北海道七飯町)の協力で1月に引き続き実施する。
種差海岸周辺では50年ほど前までは多くの人が馬を飼い、荷物の運搬や農作業に使っていた。組合では、植生にも負荷が少ない地域の馬搬文化の復活を目指している。
観光地の海岸沿いを大型の馬が木を力強く引っ張っている姿は珍しく、通りかかった観光客らは立ち止まり作業風景をカメラに収めていた。
同組合業務課長の工藤義治さんは「馬搬は山林で伐採した木を運ぶ際に使われ、当地でも20年以上前には行われていたが重機の普及によって衰退した。今は北海道や岩手県遠野地方に残るのみ。馬搬は重機の入れない場所へも入れるし、植生や土への負荷が少ない。普通、馬搬は山の中が多いが、今回のようにすぐ見られる場所での作業は珍しい。南部地方は馬文化も特徴。その意味でも馬搬は来年も実施したい」と話す。
北海道小松畜産の小松達也さんは「木の混んでいるところは機械だと作業が難しい。馬は1メートルの幅があれば通って行けるので、山の中から木を出すのには馬が向いている。昨年あたりから馬搬が見直され仕事がだんだん出てきている。この馬は2年前までは『ばんえい競馬』で活躍していた12歳のヤマサングレイト。本当に人の言うことをよく聞くいい馬」と胸を張る。