八戸市の東北電力八戸火力発電所(八戸市河原木)敷地内で8月17日・18日、今年で撤去・解体が決まっている同発電所3号機の煙突を市民が鑑賞する「さよなら、ぼくらの大煙突」が開かれた。
同発電所3号機は1968(昭和43)年に運転開始。大煙突は高さ120メートル、八戸市内で最も高さのある構造物で50年にわたり臨海工業地域のシンボル的存在だった。新設された5号機が稼働を始め、設備の老朽化も進んできたことから、3号機は2016年に運転を停止、付随する大煙突も撤去・解体されることになった。
イベントは八戸市が主催。八戸市が事務局となり工場をアートな視点で捉え地域の魅力や価値を再発見する活動を行っている「八戸工場大学」と東北電力八戸火力発電所が共同で企画・運営。同発電所の近隣に位置するエプソンアトミックスもイベントの駐車場で協力し、市民・産業・行政が一体となり地域のシンボルだった大煙突を見送った。
イベントでは来場者がイベント限定の「発電所6号機」の運転員となり自転車型トレーニング器具をこぎ、電気を発電。蓄電された電気で煙突をライトアップし来場者が鑑賞した。ライトアップの照明の操作も実際の発電所職員が手動で行った。
来場者は普段は入ることのできない発電所敷地内で自転車型トレーニング器具をこぐという異空間に最初は戸惑いながらも一心不乱に自転車をこぎ、幻想的な音楽とともにライトアップされた煙突を眺めていた。会場ではタピオカを石炭に見立てたドリンクや工場の部品を利用したアクセサリー類・ポストカードなども販売し、訪れた約300人の来場者は記念写真を撮りながら思い思いの時間を過ごしつつ大煙突に別れを告げた。
八戸工場大学の事務局を務める八戸市まちづくり文化スポーツ部まちづくり文化推進室の大澤苑美さんは「たくさんの方が来場し、そして皆で自転車をこぎ電力を作り、みんなの力で作った電気で煙突を明るくし、みんなで煙突を眺めることができて感無量。本当に市民に愛されていた私たちの煙突だったという気持ち。私も高揚した気分ですごくきれいと思って眺めてる」と興奮気味に話した。
市内から来場した親子連れの浪岡真嗣さんは「午前中の発電所の見学会にも参加した。夜は皆でライトアップという貴重な経験ができて楽しかった」、長男のただひで君は「今日の朝の練習よりも、夜の自転車こぎの方が大変だった。いっぱいこいだから、こんなに光がともってうれしい。自分の力で電気ができるんだとびっくりした」とそれぞれ話した。