新型コロナウイルスの影響で今年の八戸えんぶりが中止となる中、2月17日、長者山新羅神社(八戸市長者)でえんぶり組関係者による奉納と、神社関係者による中止奉告祭が非公開で行われた。
えんぶりの中止は、94年ぶり。前回の中止は大正天皇が亡くなった翌年の1927(昭和2)年だった。中止となりそれぞれの思いが交錯する中、長者山新羅神社を訪れたえんぶり関係者に話を聞いた。
この日は、えんぶりの元祖とされる売市えんぶり組と取締を担当する組の代表らが長者山新羅神社に奉納。売市えんぶり組ではやしや祝福芸を担当する西村優紀さんは「毎年のことなので、中止は寂しい。やっとワクチン接種が始まり、早くコロナ禍が収まって、八戸三社大祭、えんぶり、日常生活が取り戻せたら良いと思う」と願いを込めた。
えんぶりが禁止された明治時代にえんぶりの再開に尽力した旧八戸藩士大澤多門の地元糠塚地域に拠点を置く糠塚えんぶり組は、2月14日に自主的に長者山新羅神社を参拝した。親方の笹垣堅一さんは「一言で言って残念だが、安心した。14日の参拝は大澤多門のお膝元の組として、来ないわけにはいかなかった」と肩を落としながらも、えんぶりの再興に尽力した先人に思いをはせる。
17日は八戸市教育委員会が定めた「えんぶりの日」で、八戸市立の小中学校は休みとなった。中居林えんぶり組で太夫を担当する中学校教諭の横田英敏さんは、自主的に長者山新羅神社に足を運んだ。「安心と寂しいが半々。やはり、2月17日が近づくとどんな形でもやりたかったという気持ちもある。いろいろな祭りが中止になる中で、いろいろな形で祭りを発信していけたらいいと思う」と悔しさをにじませながらも、未来へ向けた思いを語った。
えんぶりの奉納が行われる長者山新羅神社の柳川浩司宮司は「えんぶり組の人々も大変だったと思うが、コロナ感染者が出ないよう、やむを得ず中止奉告祭を行った。800年続くえんぶりの歴史や伝統は絶やしてはいけない。これを伝えていくことが私たちの使命。えんぶり組の方々も健康に気をつけながら続けていってほしい。来年はコロナウイルスが止んで、例年通り催行出来たらよいと期待している。神様にもそうお願いした」と話す。