八戸圏域在住のアマチュアを中心に活動する吹奏楽団「八戸ウインドアンサンブル」が1979年(昭和54年)の活動開始以来初となる吹奏楽コンクール全国大会出場の切符を手にした。
吹奏楽コンクール全国大会は「吹奏楽の甲子園」ともいわれ、八戸圏域の団体が出場するには、八戸地区大会、青森県大会、東北大会の3つの大会を勝ち進む必要がある。 昨年は新型コロナウイルスの影響で中止。今年は、2年ぶりの開催となった。
同楽団は9月5日に録画審査で行われた吹奏楽コンクール第64回東北大会職場・一般の部に青森県代表として出場し、金賞を受賞。青森県内の職場・一般の吹奏楽団として初めて快挙となる。10月31日、香川県高松市で行われる第69回全日本吹奏楽コンクールに東北代表として出場する。
団長の須藤博紀さんは「吹奏楽をやっていた人なら誰しも憧れる大会だが、出場できるとはみじんも思っていなかった。」と驚く。1979年の設立から、年に一度の定期演奏会や、大会出場、イベント出演や慰問演奏など、八戸圏域を中心に活動を続け、2019(令和元)年に創立40周年を迎えた。吹奏楽コンクールでは、2006(平成18)年の東北大会でも金賞を受賞していたが全国大会へは届かなかった。昨年からは収束の見えないコロナ禍で十分な練習時間を設けられなかったが、今回の金賞受賞については約40人の団員が「うまくなるためにやれることを着実にやって来た結果」と振り返る。初めての録画審査は例年の生演奏の審査とは音の響きなどが異なり不安もあった。どのように録画するか検討していたところ、常任指揮者の佐藤憲一さんの「県大会の緊張感に勝る演奏はない」との一言で県大会の記録映像を提出することにした。この演奏が東北大会で金賞を受賞し、初めて全国大会へと駒を進めた。
一方で、八戸市内で吹奏楽に取り組む子どもたちや若者たちは、東北大会出場の機会を失った。小学生の部、中学生大編成・小編成の部、高等学校大編成・小編成の部に出場を予定していた八戸市内の小学校・中学校・高校の6団体は、感染拡大を受けた行政の部活動禁止などの緊急対策で、東北大会の出場を辞退せざるを得ない状況に。「吹奏楽の甲子園」に向けて日々練習を重ねた末に大会出場の機会を失った子どもたちに対して、須藤さんは「子どもたちにとって、学生時代に一度限りとなるかもしれない大切な大会」と複雑な心境をにじませる。
八戸ウインドアンサンブルは1979年の結成以来、八戸を代表する吹奏楽団として社会人デビューした若者たちが音楽活動を続けるための受け皿としても機能してきた。須藤さんは「いろいろな事情で、子どもたちは出場が叶わなかった。今は目標が描けない状況だと思うが、八戸ウインドアンサンブルは卒業後も音楽を続けられる場を提供していきたい」と語る。