江戸時代後期に当時の八戸藩主が造らせた「八戸南部氏庭園」(八戸市売市)が11月4日~7日、一般開放される。
八戸南部氏庭園は八戸藩の最後の藩主9代目南部信順(のぶゆき)が薩摩藩島津家から婿養子として迎えられたことをきっかけに馬淵川沿いの物見場を再整備し、1847年に藩主の休憩の場として造園された。藩主が薩摩藩出身であったことから、薩摩藩の庭師が造園したとも伝わる。現在は八戸市が管理し、春と秋に一般開放されている。
園内には約30本の松や、ツツジ、樹齢数百年といわれるモミの木などが植えられている。水を用いずに水辺を表現した枯れ山水や、不老不死の仙人が住むといわれる伝説の山「蓬莱(ほうらい)山」に見立てた島が浮かぶ景色などが広がり、江戸後期から幕末、明治の激動の時代を生きた藩主が眺めたと思われる景色を現代にとどめている。天候に恵まれれば庭園の向こうに八甲田連峰が姿を現し、写真愛好家がシャッターを切る姿も見られる。
八戸藩南部家16代当主の南部光隆さんは南部信順の人物像について「戊辰(ぼしん)戦争の複雑な状況で領民を戦渦に巻き込まないように情報収集に努め八戸を守り切った、判断力とフットワークの良さを持ち合わせた人物だった」と振り返る。庭園については「故郷の薩摩の国を思いながら眺めていたのではないか」と話す。
一般開放を実施する八戸市文化創造推進課の大高聡史さんは「今年は例年よりも1、2週間ほど期間を遅らせて、より紅葉が深まる時期の開催にした。来場してほしい」と呼びかける。
開園時間は10時~16時。入園無料。園内では感染対策として周囲に人がいる場合はマスクの着用が必要。