八戸工業大学(八戸市妙)で「地域文化論」と「歴史」を担当する非常勤講師の滝尻善英さんが昨年から、歴史の科目に川柳を詠む「詠史句」を取り入れた授業を行っている。
滝尻さんは高校の教員として日本史を教えた経験を生かし、同大で教べんを執る。旧南部領の歴史・信仰・文化に造けいが深く、青森県文化財保護協会の会長や「はちのへ川柳社」の会長を務める。
2019年度から感性デザイン学部で「地域文化論」を、2022年度からは全学部の「歴史」も担当。詠史句は、かつて南部氏が治め南部藩・八戸藩と呼ばれた八戸の地域学や地方から見た中央史について、学生が自ら深く考え、親しみを持ってもらおうと、昨年4月から取り入れた。
授業は、学生らが毎回レポートをまとめ滝尻さんに詠史句を提出し、滝尻さんが選んだ10句を次の授業で紹介する流れ。学生らは、南部藩主の急逝によって誕生した八戸藩については「うっかりで出来た八戸二万石」、江戸時代末期に起きた民衆運動については「世も末だ『ええじゃないか』と我忘れ」、明治~昭和の戦争史については「人はみな歴史を学び反省す」などと詠み、五七五のリズムに自らの感想や思いを込めた。
学生らは「歴史が苦手だったが、興味を持って取り組めた」「新選組が八戸地方と関わっていたことを知り、面白く授業に参加できた」「どの時期に何が起こっていたのか、誰が関わっていたのかを確認できた」などと振り返る。
1月31日には、学生が詠んだ句をまとめた句集「2022年度・Z世代の詠史句」を発行。160句を掲載した。同大の図書館や八戸市立図書館(糠塚)で貸し出すほか、はちのへ川柳社で配布している。
詠史句を取り入れた授業は4月に2年目を迎える。滝尻さんは「詠史句は学生たちが頭をひねって指を折りながら絞り出した力作。授業に取り入れることは有効だと改めて感じた」と話す。