八戸沖で「下北八戸沖石炭層生命圏掘削」を続けている地球深部探査船「ちきゅう」(海洋研究開発機構、神奈川県横須賀市)は9月6日、海底下からの掘削深度が2111メートルを超え、海洋科学掘削の世界最深度記録を更新した。従来の記録は1993年に米国のジョイデスレゾリューション号が達成した2111メートル。
翌7日には、世界最深記録達成記念式典を八戸市庁1階市民ホールで行い、関係者や市民など約70人が偉業をたたえた。
式典の中で、同機構理事の堀田平さんは「世界記録以降の掘削は全て人類未到の場所での探査となる。今回の記録も八戸の皆さんの協力と理解と支援があればこそ」と話し、小林眞八戸市長は「ロンドンオリンピックの小原・伊調両選手の金メダル、光星学院の甲子園での準優勝とこの夏は八戸にとってうれしいことが続いた。そして今回の世界新記録。人類の未来や希望、可能性が八戸沖から広がる事は喜ばしいこと」と話した。
式典では、「祝 世界最深記録達成」と書かれたくす玉が割られ、「ちきゅう」研究成果活用促進八戸市議会議員連盟の坂本美洋会長の音頭で万歳三唱が行われ、会場は祝福ムードに包まれた。
「ちきゅう」に関する展示を行い、小学生向けの海洋科学活動を支援する「マリエントちきゅうたんけんクラブ」もある八戸水産科学館「マリエント」の吉井仁美館長は「マリエントに来る子どもたちは、ちきゅう号を自分たちのことのように思っている。震災で船が傷ついたときには心を痛め、出航するときにはわがことのように誇らしく感じていた。今回の記録達成もとても喜ぶと思う。これが刺激となって研究者を志す子どももいるのでは」と期待を寄せた。
式典を担当した八戸市教育委員会社会教育課の職員は「ちきゅう号は、海底下掘削で世界一だが、八戸には、露出している場所で日本一低い、住金鉱業(同市松舘)の砕石場の通称『八戸キャニオン』もある。日本一も世界一もあって、うれしい限り」と笑顔で話す。