八戸市中心街に2011年2月に開館した文化観光施設「八戸ポータルミュージアム(愛称=はっち)」のこれまでの歩みをまとめた書籍が発売された。
同施設は鉄筋コンクリートの地上5階建てで、「地域資源を大事に思いながら、まちの新しい魅力をつくり出す」をコンセプトに八戸市が運営している。館内では観光・産業の展示や、イベントなどの貸し館事業、中心街のにぎわいや文化芸術をサポートし新しい価値を創造する自主事業などを行っている。インキュベーションオフィス「ものづくりスタジオ」では衣食住のジャンルのクラフト作家をサポートしている。
オープンから1年後の2012年2月11日には、来館者が88万8888人を達成。当初の目標人数だった65万人を大きく上回った。今年1月末までに累計入場者が176万人と順調に推移している。八戸商工会議所の調査では、開館の2011年には同市中心街の歩行者通行量が30%増え、同施設が立地する三日町では通行量が90%増えたというデータもある。
オープンから1カ月後の3月11日には東日本大震災が発生、急きょ避難所としても活用された。昨年8月には、深夜に地元出身選手が出場するロンドンオリンピック女子レスリング競技のパブリックビューイングの会場にもなった。
一方、全国的にも類似の施設や事業が少ないことから、同施設企画運営グループ・コーディネーターの今川和佳子さんは「一見、意図が伝わりにくい事業もあったかもしれない」と振り返る。八戸が発祥の地といわれるデコレーショントラック(通称=デコトラ)と郷土芸能の獅子舞を組み合わせた「デコトラヨイサー」もその一つ。「表面的には『公共施設とデコトラ?』という疑問もあったかもしれない。埋もれている八戸固有の文化を新たな視点で見つめ直し、新しいものを作りあげていく過程のコミュニケーションも大切にしたい」と今川さん。
同書の中では、アーティストがインスピレーションを受けた経緯や、衣装の製作風景、「デコトラ舞」の様子などを10ページにわたり紹介し、事業の全体がよくわかるように工夫した。
同書では、開館前のプレ事業から、館内の案内、開館時の様子、2012年3月までの事業の様子を掲載している。
今川さんは「市井の人とともに創り上げていくのが『はっち』の特徴。多くの市民やアーティストのおかげで事業が成り立っていると、あらためて感じた。八戸には多くの市民作家やまちを盛り上げたいと頑張っている人がいる。そういう人の姿をもっと知ってほしい」と購入を呼び掛ける。
昨年11月の発売以来、市民が購入するほか、全国の文化芸術施設関係者からの問い合わせもあるという。
同書のタイトルは「2010.6-2012.3 八戸ポータルミュージアム はっちの歩み」。体裁はA4オールカラー210ページ、価格は1,000円。同施設1階のカネイリミュージアムショップで扱う。10時~19時。第2火曜(休日の場合その翌日)と年末年始休館。