
八戸酒造(湊町本町)が5月31日、八戸プラザホテルアーバンホール(八戸市柏崎1)で「第11回八仙を愉(たの)しむ会」を開催した。
青森の地酒「陸奥男山」「陸奥八仙」を製造する八戸酒造。この日は、全国各地から516人の日本酒ファンが来場し、同社の蔵人(くらびと)が製造した49種類の酒を味わい、創業250周年を祝った。
鏡開きに続いて行った乾杯で、熊谷雄一八戸市長は「八戸の観光振興プランの第一に掲げるのが『食のまち・はちのへ』。そのためには八仙の力と皆さんの協力が必要」とあいさつした。
抽選会やステージイベントでは、リポーターの中島美華さん、タレントの十日市秀悦さんが司会を務めた。十日市さんは、陸奥湊地区で魚を売る女性「いさばのかっちゃ」に扮(ふん)して客席を巡り、来場者と交流するなどして会場を湧かせた。
同社の始まりは江戸時代中期、初代駒井庄三郎が現在の滋賀県から岩手県盛岡市の商家・村井家に入って商売を学び、1775年、南部町剣吉でこうじ店を開いたこととされる。1888(明治21)年、4代目駒井庄三郎が八戸に酒造場を開業。「創業銘柄」に位置付ける陸奥男山は1910(明治43)年に商標登録され、1934(昭和9)年、全国清酒品評会で名誉賞に輝いた。
同社では代表銘柄「陸奥八仙」を初めて販売した1999(平成11)年以降、若手の蔵人が自由な発想で酒を醸造する「ミクシードシリーズ」や、斗南丘牧場(むつ市)とコラボレーションしたヨーグルトリキュール「八仙ボンサーブ」、県産の果汁を使った酒「アオモリジューシーラボ」を開発するなど、日本酒の魅力向上に取り組んできた。
現在は日本酒を取り巻く人の交流活性化にも力を入れる。日本酒ファンが酒米の田植えに参加するイベントや、酒蔵を会場に開く「八仙 夏の蔵まつり」に取り組むほか、「クラフト酒」を製造する酒蔵の開業を目指す人の受け入れも行う。昨年、八戸出身で音楽グループandrop(アンドロップ)のボーカル・ギターの内澤崇仁さんが製造に参加した酒「トースト」を販売し、同グループのファンが同社のイベントに参加するとも多くなったという。
8代目社長の駒井庄三郎さんはあいさつで「陸奥八仙を造った1999年が『第三の創業』と考えている。歴史を振り返ると組織も変わったが、駒井庄三郎の名前で初代から現在まで酒造りを続けてきたことは変わらない。現在、若いスタッフがいろんな酒造りに挑戦している。これからもさまざまな種類の酒を楽しんでもらえるよう努力していく」と話した。
観光DMO「VISITはちのへ」の佐々木伸夫理事長は「日本の伝統的酒造りはユネスコ無形文化遺産にも指定されている。八仙は今や世界を見つめて進んでいく酒。これからも八戸酒造を応援していきたい」と話す。