シンガー・ソングライター・渡ケントさんの新曲「漂流」の配信が8月28日、主要音楽配信サービスで始まった。
群馬県伊勢崎市出身の渡さん。昨年3月に埼玉県から青森県階上町に移住し、階上駅周辺地区の交流スペース「わたしの素(ス)ペース(わたスぺ)」(階上町道仏)でカレーの調理を担当するほか、施設の一角で古物店「Sonomono(そのもの)」を経営している。移住後の新曲の発表は、4月の「海へ」に続き2曲目。親交が深いロックバンド「PARIS on the city!」の小林ファンキ風格さんをギターに迎え、小刻みなリズムやソロ演奏、アップテンポの曲調で海辺の暮らしを表現し、爽快感のある曲に仕上げた。同じコード進行を繰り返したり、響きに濁りのある「テンションコード」を用いたりして、日々抱く不安をわずかに忍ばせたという。
歌詞は、関東での忙しい日々を離れ、海と山に囲まれた階上での生活を「気が付いたら海山越えて遠くに来たもんだ」と振り返る場面から始まる。風光明媚(めいび)な海岸沿いの道で目線の高さをウミネコが飛んでいった出来事や、「気に入ったガラクタ連れていこうよ海へ」と古物店を営む中で抱いた思いなど、階上での日常をちりばめた。
音楽活動は今年で10周年を迎える。社会福祉士として活動した関東での暮らしは忙しく、葛藤を音楽に込めることが多かった。2020年に発表した楽曲「ガラクタなまいにち」では「どこにだってほら居場所がない」と当時の思いを吐露した。階上での暮らしは「音楽の方向性をもう一度定める時間だった」という。わたスぺを訪れる人との交流や、海の見える神社の境内で波音に身を任せる時間などが日常になり、心身に余白が生まれた。「漂流」では、現在の自身の思いを素直に描いたという。
「誰もが『大変さ』を抱えて生きる中で『頑張れ』と言うのではなく、『自分はこう生きている』ということをゆらゆらと漂わせたかった。それをキャッチしてもらえたら」と渡さん。「関東では地域に根を張って活動する感覚がなかった。階上は『何もない』と言われることもあるが、歌を歌う場があり、カレーを食べてくれる人、わたスぺが好きで通ってくれる人がいる。自分に必要なことを手放さず続けられることに、幸せを感じる」と話す。
9月12日には、八食センター(八戸市河原木)の飲食イベント「八食オータムフェスティバル」のステージに出演する。開催時間は10時~15時。入場無料。