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「発泡スチロールの美」がつぼに 陶芸家の桝本さん、八戸市美の珍事から着想

桝本さんの作品「美/壷(つぼ)」

桝本さんの作品「美/壷(つぼ)」

 「発泡スチロールの美」を題材にしたつぼが現在、八戸市美術館(八戸市番町)の新収蔵作品展「ここにある理由」で展示されている。

「美」が失われた館銘板(2024年)

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 制作したのは滋賀県在住の陶芸家・桝本佳子さん。笑いを通して工芸品を身近に感じてもらおうと、つぼにさまざまなモチーフが刺さったような作品を手がけることで知られる。「美/壷(つぼ)」と名付けられたつぼは、「美だけが発泡スチロール」と話題を呼んだ同館屋外広場の館銘板から着想を得て完成させた。館銘板と同じ書体の「美」の字がめりこんだようなデザインで、来館者の注目を集めている。

 同館によると、昨年開催された「ポケモン×(かける)工芸展」に出品した桝本さんが同館を訪れた際、荷物の中からおもむろにつぼを取り出し、学芸員に渡したという。「学芸員が『ばかだね』と笑ってくれたことが一番のほめ言葉だった」と桝本さん。同館では一時的につぼを預かり、2025年、収集委員会の検討を経て正式に収蔵品にすることが決まった。同館は八戸市や同館とのゆかりを重視して作品を収集しており、「美/壷」も館銘板を巡る出来事から生まれた作品として新たなコレクションに加わった。同展担当学芸員の三浦あかりさんは「八戸市美術館の出来事を面白いと感じてくれた桝本さんの思いが形になって、収蔵に至ることになったのでは」と話す。

 事の発端は2024年3月11日、屋外広場の「八」「戸」「市」「美」「術」「館」のステンレス製館銘板から「美」だけがなくなった出来事にさかのぼる。当時、周辺には雪が積もっていた。同館では「美」が出てくることを期待して雪解けを待ったが、「美」が出てくることはなかった。SNSでは「美」がなくなった館銘板の写真が拡散され、「美」の空白を埋めて「秘術館」「忍術館」「柔術館」などの投稿で盛り上がりを見せた。

 4月に入ると「美」が戻ったが、ステンレスと遜色なく精巧に作られた発泡スチロール製で、SNSでは「美が帰ってきたが、発泡スチロールだ」とさらに話題になった。一級建築士の佐藤慎也館長が寸分の狂いなく発泡スチロールを切り出して作ったものであることが報じられると、「美」を見るためだけに来館する人や帰省した家族と記念撮影に来る人もいたという。佐藤館長は当時、自身のSNSで「こんなことがネタになっていてなんですが、話題になることはよいことだと思うようにします」と投稿していた。

 「美」はその後、「館長の美 製作キット」として製品化されるなど話題が続き、「美を探す」をテーマにした展覧会「Finding Our Beauty」ではインスタレーション作品「美のない美術館」も展示された。

 一連の出来事をSNSや報道を通して知った桝本さんは「館銘板から『美』が勢いよく飛び、つぼにはまった」という物語を着想。つぼにはまった「美」は本物の館銘板の「美」と同じサイズにしようと、焼き上げた後を想定して原寸の118%で制作。直線部分が歪まないように「20年続けてきた陶芸の技術を『美』に結集した」という。素焼きの後、「美」が浮き出て見えるように表面に紺色、側面は白の釉薬を付け、本焼きを経て完成させた。

 「『(美が)ここにあったやん』という感じで作った。うまいこと焼けて八戸に持って行けた」と桝本さん。「皆さんには『あの出来事がまたいじられている』と感じてもらえたら。(美術館の)受付の机の横にでも飾って、ちょっとした時に見て笑ってほしい」と話す。「次は八幡馬など、八戸の郷土玩具をモチーフにできたら」とも。

 開館時間は10時~19時。入場無料。展示は今月20日まで。

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