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重地えんぶり組「太夫」の石橋さん、えんぶりと酒造りの伝統守る

石橋伸也さんと「重地えんぶり組」代表の上田周弘さん

石橋伸也さんと「重地えんぶり組」代表の上田周弘さん

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 2月17日~20日、3年ぶりに開催される冬の祭り「八戸えんぶり」に向け、八戸市新井田の「重地えんぶり組」で「太夫」を担当する石橋伸也さんが仕事と練習の両立に励んでいる。

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 石橋さんは烏帽子(えぼし)をかぶって舞う「太夫」のうち、田畑を耕す農具「カンダイ」を操りながら田んぼから水が漏れないためのせりふを述べる「くろどめ」を担当。同えんぶり組には2017(平成29)年、知人の誘いで参加。「初めのうちは娘にえんぶりをやらせたくて参加したが、あれよあれよと烏帽子をかぶせられ、太夫を担当するようになった。本番まで2週間しかなかったので必死だった」と振り返る。以来6年間、同えんぶり組の中心的なメンバーの一人として活動を続けてきた。

 仕事は、「陸奥男山」「陸奥八仙」を製造する八戸酒造(八戸市湊町)で酒を造る蔵人。2005(平成17)年、福祉関係の仕事を退職して同社に転職。「酒の知識はゼロだったが、職人に憧れて転職した」という。現在は限定酒「ミクシード・シリーズ」の発案・製造や、蔵人と市民が育てた米で酒を製造する「がんじゃ自然酒倶楽部」の「田んぼ部長」として管理・運営を担当する。

 仕事は酒造り、プライベートはえんぶりと、「米」に関連する活動を続けてきたが、コロナ禍は石橋さんの活動に影を落とした。同社は一時期、首都圏、中国、アメリカなどへの出荷量が例年と比べ2~3割減った。その矢先、八戸えんぶりが2年連続の中止に追い込まれた。「酒の製造量が減ることにもどかしさを感じていた」「えんぶりが開催されないことは仕方ないが、やりたいという気持ちは持ち続けていた」と心境を振り返る。

 今年、出荷量がコロナ禍前の水準まで戻り始め、「八戸えんぶり」も3年ぶりに開催されることが決まり、明るい兆しが見えてきた。同えんぶり組は3年ぶりに全体練習を再開。同えんぶり組代表の上田周弘さんは石橋さんに「私たちも年を取る。これからの世代を引っ張っていってほしい」と期待を込める。「できていないところがまだいっぱいある。極められれば良いと思う。(主役の)藤九郎の烏帽子をかぶるとまではいかないが、やらせてもらっているだけありがたい」と石橋さん。

 えんぶりは通説として「800年の歴史がある」と伝わる。江戸時代から続く南部流の酒造りの流れを背景に持つ同社は、1775年の創業から間もなく250年の節目を迎える。石橋さんは「南部杜氏」の資格取得を目指し、酒造りの先を見据える。同社の駒井秀介専務は「米作りと酒造りを担当するなかで、えんぶりにも関わることに意味があると思う」と石橋さんをねぎらう。石橋さんは「日本酒も郷土芸能も、なくしてはいけないもの。長い歴史の中に自分がいるというところに共通点を感じている」と笑顔を見せる。

 同えんぶり組は2月18日、八戸市公会堂(内丸)で行われる「第46回えんぶり公演」に出演する。えんぶり公演は13時~。観覧料は、前売り=1,000円、当日=1,100円。チケットは、八戸市公会堂、南郷文化ホール、はっち、ラピアで取り扱う。

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